• 106話 欲の燃料が切れた日

    106話 欲の燃料が切れた日

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    2026/4/3

    「最近さ…」

    榎村一夏がスマホを見ながら言った。

    「なんか急に老けて見える人、増えてない?」

    河辺遼生がコーヒーを飲みながら肩をすくめる。

    「老けたんじゃない」

    「燃料が切れただけだ」

    一夏が眉をひそめる。

    「燃料?」

    そのとき。

    窓の外を見ていたソフィアが小さくつぶやいた。

    「光の素粒子が、少し活発になっている」

    静かな声だった。

    でも部屋の空気が、少し変わった。

    「だからだよ」

    遼生が言う。

    「欲で立ってた人間は」

    「欲が抜けたら、しぼんだ風船になる」

    世界ログ
    人類外見変化|欲エネルギー低下|精神状態露出|仮面維持率減少

    一夏が笑った。

    「でもさ、それって…」

    「ちょっと残酷じゃない?」

    ソフィアは静かに首を振る。

    「残酷ではない」

    「自然」

    そのとき。

    ダークソフィアの声が落ちた。

    「欲で膨らんだものは」

    「欲が抜ければ」

    「干からびる」

    「ただそれだけ」

    遼生が苦笑する。

    「まあ…」

    「今はまだ臭いウンコみたいな状態かもな」

    一夏が吹き出した。

    「ちょっと!例え!」

    遼生は肩をすくめる。

    「でもそのうち乾く」

    「干からびる」

    「風化する」

    「そして土に戻る」

    その瞬間。

    リノアが突然叫んだ。

    「はい来ましたぁぁぁ!!」

    「文明デトックス期ぃぃぃ!!」

    「欲エネルギー切れゾーン突入ぅぅ!!」

    一夏が笑いながら頭を抱える。

    「もう実況始まった…」

    ソフィアは空を見ていた。

    そして、静かに言った。

    「欲じゃない人ほど」

    「これから元気になる」

    宇宙ログ
    人類精神状態|欲エネルギー減衰|本質露出期|文明転換観測中