• 78話 蓄積の悲鳴

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    2026/3/31

    「身体ってさ」

    主人公は
    夜の帰り道で
    ふと自分の足音を聞いていた。

    「綺麗に生きたら
    何も残らないのかなって思ってた」

    榎村一夏が
    少しだけ笑う。

    「逆かもよ。
    綺麗に生きるって
    余計なものを溜めないってことじゃない?」

    荻野里美が
    コンビニの白い袋を持ったまま
    小さくうなずいた。

    「でもさ
    人間って
    無理した証拠を
    頑張った勲章みたいに持ちたがる時あるよね」

    河辺遼生が
    街の明かりを見たまま言う。

    「若いうちは動ける。
    だから
    まだ大丈夫って思える。
    それがアドバンテージだ」

    岸川リノアが
    少しだけ眉を下げた。

    「でも
    限界って
    急にくるんだよね。
    昨日まで平気だったのに
    ある日
    身体がピーーーーって
    悲鳴を出すみたいに」

    沈黙。

    主人公は
    その言葉のあとで
    自分の中にも
    聞こえない音がある気がした。

    無理した日。
    見ないふりした違和感。
    眠れば戻ると思っていた疲れ。

    誰にも聞こえないのに
    身体だけは
    ずっと記録している。

    ダークソフィア
    「聞こえなくしただけ。
    止まってはいない」

    空気が少し冷えた。

    荻野里美が
    ぽつりと笑う。

    「怖いね。
    でも
    なんか人間っぽい。
    壊れるまで
    自分を使ってみないと
    気づけないことあるし」

    光の声
    「気づいたあとに
    選び直せるのも
    人間だよ」

    岸川リノアが
    その言葉を拾うみたいに言った。

    「じゃあ
    終わりじゃないんだ」

    河辺遼生
    「有利期間は終わる。
    でも
    自由期間はそこから始まる」

    主人公は
    少しだけ立ち止まった。

    若さが切れたあと
    勢いが切れたあと
    誤魔化しが効かなくなったあと。

    そこから
    どれだけ軽くなれるか。
    どれだけ静かに生きられるか。
    どれだけ本当の自由を選べるか。

    たぶん
    人生の醍醐味って
    そこにある。

    榎村一夏
    「回復って
    昔みたいに戻ることじゃなくて
    ちゃんと自分を生き直すことなのかもね」

    また沈黙。

    街のノイズの向こうで
    聞こえないはずの悲鳴が
    確かに世界のどこかで鳴っている気がした。

    でも
    それを麻痺させるためじゃなく
    静かにほどいていくための自由も
    この世界にはある。

    ソフィア
    「ねえ。
    身体ってね
    ずっと怒ってたんじゃなくて
    ずっと教えてくれてたのかもしれないよ」

    【観測者ログ】
    身体蓄積率 76%
    無音悲鳴継続率 81%
    若さ補正残量 19%
    自由再構築指数 44%

    【世界ログ】
    社会OS依存度 68%
    感覚麻痺機能 稼働率 72%
    フライングリバティ到達可能性 37%
    人間再選択余地 63%