• 32話 光の呼び名

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    2026/3/28

    もう戻れない。
    もう戻らない。

    榎村一夏は、ふとそう思った。

    世界は相変わらずだった。

    ニュースは争い。
    SNSは怒り。
    街は忙しそうな顔。

    エビルな奴ばかりの世界。

    「やっぱりさ」

    河辺遼生がコーヒーを置いた。

    「人は欲に負けるんだよ。
    社会ってそういう構造だろ」

    一夏は少し笑った。

    「うん。そうだね」

    でも。

    ふと思い出す。

    フライングリバティ。

    あの感覚。

    やるほど優しくなる。
    やるほど世界が柔らかくなる。

    小さな良いことが
    なぜか続く。

    偶然みたいに。

    でも偶然じゃないみたいに。

    岸川リノアが窓の外を見ながら言った。

    「ねえ」

    「最近さ」

    「みんな少し優しくない?」

    荻野里美も頷いた。

    「わかる」

    「なんかね」

    「嫌なこと減った気がする」

    一夏は静かに言った。

    「良いことって」

    「悪いことじゃないんだよ」

    沈黙。

    当たり前の言葉。

    でも、誰も言わない言葉。

    良いことは
    増えても困らない。

    優しさは
    多くても壊れない。

    むしろ

    美しければ美しいほど
    素敵なことは起きる。

    それは特別じゃない。

    奇跡でもない。

    ただの

    当たり前の当たり前の日常。

    その時。

    ソフィアがふっと現れた。

    にこっと笑って言った。

    「だからね」

    「人はそれを光って呼ぶんだよ」✨

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    【世界ログ】

    光観測値
    +3.8

    フライングリバティ共鳴
    微増

    世界状態
    静かに更新中。