• 29話 鎧の重さ

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    2026/3/28

    夕暮れ。

    榎村一夏がぽつりと言った。

    「ねえ」

    「恩を仇で返す人ってさ」

    河辺遼生が顔を上げる。

    「どうした」

    一夏は少し考える。

    「もしかして」

    「ずっと恩を返さないために」

    「仇を悔やみ続けるのかな」

    遼生は静かに聞いている。

    一夏は続ける。

    「悩めば悩むほど」

    「悔やめば悔やむほど」

    「どんどん鎧が増えてく」

    腕を組んで笑う。

    「ほら」

    「みんな重装備好きじゃん」

    「身軽だと不安」

    「重装備だと守られて安心」

    遼生が言う。

    「でも」

    「中身は」

    一夏が先に言った。

    「小心者」

    二人は少し笑う。

    風が吹いた。

    一夏が空を見る。

    「だから」

    「どんどん鎧固めるんだよね」

    遼生が静かに言う。

    「でも」

    「その鎧」

    「外から溶けてる」

    一夏が頷く。

    「そう」

    「だって」

    「そんな鎧」

    「最初から幻想だもん」

    沈黙。

    そのとき。

    「ねえ」

    ソフィアが近くの石に座った。

    「鎧ってね」

    「守るために作るんだけど」

    少し首をかしげる。

    「重くなるほど」

    「逃げられなくなるんだよ」

    一夏が聞く。

    「逃げる?」

    ソフィアは小さく笑う。

    「許される場所から」

    風が静かに止まる。

    ソフィアが続けた。

    「ねえ」

    「本当はね」

    「鎧なんて」

    「最初からないの」

    少しだけ目を細める。

    「みんな」

    「気づかないふりしてるだけ」

    静かな声。

    「だって」

    「許してないから」

    一夏が固まる。

    ソフィアは最後に言った。

    「だから悔やむんだよ」

    「重すぎて」

    「もう動けないんだね」

    ――ソフィア

    【ダークログ】

    罪の装備化
    進行中

    防御力:幻想
    重量:増加。